プロジェクト通信
「The Land」について花田伸一さんからレクチャーを受けました。
事務局スタッフの高山です。
先日フリーキュレーターの花田伸一さんをお招きし、ベネッセアートサイト直島のスタッフ勉強会として、タイのチェンマイで行われている「The Land」についてレクチャーを受けました。
「The Land」は1998年からタイのチェンマイで、リクリット・ティラヴァニさん、カミン・ラーチャイプラサートさんらアーティストによって始まった活動です。約4万平方メートルのチェンマイ郊外の土地を共同運営として購入し、国内外の協力者が出入りしながら、田んぼを耕し自然との共生や自給自足を試みる実験的活動です。
「The Land」の創設者の一人のリクリット・ティラヴァニさんは、出来上がった物を展示・公開するいわゆる「アーティスト」ではなく、状況や出来事を生みだすアーティストとして、世界中で活躍されています。直島とのかかわりもあり、ベニスビエンナーレにて第5回ベネッセ賞が授与され、直島で「無題2008(ルーム・フォー・ワン)」という新作が公開されました。体験者は、空間内で3日間1人で過ごし、瞑想、浄化を体験するという作品でした。「The Land」についての今回のレクチャー(下記参照)でもリクリット・ティラヴァニさんの作品の背景や思想が色濃くわかりました。
花田さんは主に北九州で活動するフリーのキュレーターで、現在北九州を中心に、小学校を拠点に農作業や文化行事に取り組んだり、北九州市で美術グループをつくったり先進的に様々な活動をされていらっしゃる方です。花田さんは2009年8月に美術調査として1ヶ月間「The Land」に滞在されました。その「The Land」について、「街」(チェンマイという街はどういうところか)、「仏教」(信仰や瞑想が生活・文化にどうかかわっているか)、そして「The Land」(どういう活動なのか)と3つの軸をもとに説明を頂きました。
ここで、主だった話を記載します。
「街」
☆チェンマイはタイ第2の都市。人口は20万人弱。チェンマイは寺院が多く、タイの京都と呼ばれる。タイの人は温厚だというが、チェンマイの人は、さらに温厚で穏やか。もともと3つの国だったが、3つの国の主によって平和的に国が統合されたことにもよる。(滞在中も一切争い事や喧嘩も何一つなかったそうだ。)
☆バンコクは800万人以上が住み、人口も経済もタイの中心地。著名な美術学校があるが、伝統的確執が染みついている。その体質になじめない新進気鋭のアーティストが90年代からチェンマイに移住し独創性をもった活動を展開しだした。
「仏教」
☆タイの町中では、日本のアニメや家電製品などが良く目につき、暮らしの中にも日本製品が多く浸透しているが、袈裟を来た人がやはり多く、寺院も人が多く出入りし、仏教は生活に深く根ざしている。
☆そんな中でも、タイでは瞑想がポピュラー。物事をありのままみるというヴィパッサー瞑想というのは、自分の呼吸をひたすら観察したり、歩く行為を極端に遅くすることを通じて解脱し真理を得るというもの。花田さんも、「The Land」滞在中に向こうのスタッフから進められ6日間チャレンジしたそうで、6日目の朝にはこれは真理か?というものが見えたらしい。が、数日で日常に戻ってしまったとのこと。
☆ビジネスマンでも1年間出家をしたり、休日はお寺で瞑想にふけたりと、身近に仏の教えを学ぶ機会が多い。
☆というのも、仏陀は宗教上の偉大な人と思っている人は少なく、より身近に感じているようだ。仏陀の教えそのものは、ドライでメカニカルであったようで、言葉と身体を結びつける教えとのこと。仏陀の教えを後の人が体系化し、荘厳なものになっていった。この辺りも生活に仏教がなんなく根付いている要因なのであろうか?
(花田さんが調査の一環で行った現地の人へのアンケートでは尊敬する人はとの問いに対して、仏陀が一番多くの回答を得たとのこと。)
「The Land」
☆The Landはそもそも、2人のアーティストが、タイにて活動するアーティストを支援するため、せめて食うものは困らないようにしたのがはじまり。
☆様々な国内外のアーティストや建築家が入れ替わり立ち替わり滞在するなかで、人が住めたり、交流できる小屋が生まれ、穀物倉庫が出来、また動物の糞尿からエネルギーつくる設備や太陽発電によって電気を補う設備などが彼らによって作られていった。
☆田んぼの農法は「不耕起、無肥料、無農薬、無除草」の日本の福岡正信による自然農法を学び実践している。
☆今回の滞在中にも、川から水をひいたり、緑のアーチを作ったりと、農作業だけでなく、現地で昔から行われている土木作業も行っており、講習会やワークショップが頻繁に行われている。
☆「The Land」でもヴィパッサー瞑想が教えられ、ヨガやタイ式マッサージ法を学んだり、仏教文化を習うワークショップもある。
☆学生や若いアーティスト志望が訪れては学びを得ていて、タイだけではなく国際色豊かな人が出たり入ったりしているとのこと。花田さん滞在中はアメリカやヨーロッパからが多かったとのこと。
花田さんのお話から、「The Land」がなぜ注目されるかがわかった気がしました。
それは、都市文化や物質文明、近代的な生活様式への反動として、田舎で自然との共生を行いながら精神性を高め、創造や生活の原点を問い直す活動であることがわかりました。
農業を通じ思想や美術を学ぶ。「The Land」という場所よりもその活動が注目を得て、世界の人とのつながりや共鳴をよんでいることも興味深いことです。
直島での活動は今年で6年、豊島では3年目を迎えます。里山の景観にも近づき、米の質があがり、食すことのできる農作物も多くでき、プロジェクト当初の再生・復活という段階は終わりました。次に目指すべき段階を考えるにあたって今回の花田さんのお話は大変参考になりました。直島、豊島の自然や、生活や文化を構成しているものをもう一度よく観察し、ベネッセアートサイト直島のスタッフと一緒に、生活の豊かさ、地域をよくすることを問いながら実践を重ねていこうという意欲がわきました。
追伸
レクチャー後には、直島宮之浦地区のシナモンさんにて、花田さんとのささやかな懇親会が行われ、刺激と学びをいっぱい頂きました。花田伸一さん、ありがとうございました!!

